KickassTorrents
URL |
kickass |
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言語 | 多言語 (30以上の言語、主要言語は英語) |
タイプ | トレントディレクトリ、マグネットリンクプロバイダ |
登録 | 任意 |
ユーザー数 | 1日あたり100万件以上(2015年8月) |
開始 | 2008年11月 |
現在の状態 | 閉鎖 |
ファイル共有 |
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KickassTorrents(KAT)は、トレントファイルやマグネットリンクのウェブディレクトリを提供し、BitTorrentプロトコルを用いたP2Pファイル共有を促進するウェブサイトであった。2008年に設立され、2014年11月にはパイレート・ベイを抜いて世界で最も訪問者の多いBitTorrentディレクトリとなったと、同サイトのアレクサランキングが示している[1]。KATは2016年7月20日にアメリカ政府によってドメインが押収され、オフラインとなった。同時に、同サイトのプロキシサーバもスタッフによって停止された[2]。
2016年12月、KATの元スタッフは、前身サイトの機能と外観を備えたウェブサイトを作成し、KATコミュニティを復活させた[3]。
歴史
[編集]KATは2008年11月にドメイン名 kickasstorrents.comで最初に立ち上げられた。2011年4月、DemonoidやTorrentzに対して行われたアメリカ合衆国司法省による一連のドメイン名押収を受け、フィリピンのドメイン「kat.ph」に移転した[4]。その後、運営者たちは半年ごとにドメインを変更する計画のもと、ka.tt、kickass.to、kickass.so、kickasstorrents.im、kat.crなど複数のドメインを経由した[5]。
2016年6月、KATは公式のTorネットワーク上の.onionアドレスを追加した[6]。
ブロッキングと検閲
[編集]KickassTorrentsは、自らのウェブサイト上でDMCAに準拠しており、著作権者から報告された侵害トレントを削除していると主張していた[7]。
2013年2月28日、イギリスのインターネットサービスプロバイダ(ISP)は、ロンドンの高等法院によってKickassTorrentsを含む2つのトレントサイトへのアクセスをブロックするよう命じられた。判事であるリチャード・アーノルドは、同サイトの設計が著作権侵害に寄与していると判断した[8][9]。6月14日、KickassTorrentsは定期的なドメイン変更の一環として、トンガのドメイン名であるkickass.toに移行した[10]。
その後の6月23日、KickassTorrentsはモーション・ピクチャー・アソシエーションの要請によりGoogle検索から削除された[11]。2013年8月末には、ベルギーのISPによってKATがブロックされた[12]。2014年1月には、複数のアイルランドのISPがKATのブロックを開始し、[13] 2月にはTwitterがKATへのリンクをブロックしたが、数日後に解除された[14]。2014年6月には、マレーシアでKATが著作権法違反のためマレーシア通信マルチメディア委員会によってブロックされた[15]。
2014年12月、KATは定期的なドメイン変更の一環として、ソマリアのドメイン名kickass.soに移行したと報じられた[16][17]。2015年2月9日、kickass.soはWHOIS上で「banned」と表示され、サイトはオフラインとなった。同日中にkickass.toドメインへと戻された[18]。2月14日、「kickass.to」という文言を含むメッセージがSteamのチャットでブロックされていることが判明したが、「kickass.so」や他のトレントサイトは「potentially malicious」としてフラグされるにとどまり、ブロックはされていなかった[19]。
2015年4月23日、KATはマン島のドメインkickasstorrents.imに移行したが[20]、同日中に停止され、4月24日にはコスタリカのドメインkat.crに移行した[21]。2015年7月までに、kat.crドメインはGoogle検索の結果から削除された。その後、多くの地域でKATを検索すると、訪問者にマルウェアをダウンロードさせようとする偽のKATサイトが上位に表示されるようになった[22]。
2015年10月、ポルトガルでは裁判所を通さず、ISP・著作権者・文化省の三者間で自発的な合意が結ばれ、KATを含む主要なBitTorrentサイトへのアクセスがブロックされた[23]。同時期、インドでも著作権侵害によりKATが禁止された[24]。また、同時期にGoogle ChromeおよびMozilla Firefoxは、KATの広告の一部がマルウェアにリンクしていたとして、同サイトへのアクセスをブロックした[25]。2016年4月、Google ChromeとMozilla Firefoxは、フィッシングの懸念からKATを再びブロックした[26]。両者のブロックは、KATが懸念事項に対処した後に解除された。
2016年8月、同サイトの主要ドメインの1つが売りに出された[27][28]。
容疑者の逮捕
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2016年7月20日、アメリカ合衆国司法省はKAT.crドメインを押収し、その容疑者を特定したと発表した。30歳のウクライナ人男性で、ネット上では「tirm」として知られるアルテム・ヴァウリン(ウクライナ語: Артем Ваулін)が、アメリカの4件の刑事告発を受けてポーランドで拘束された[29]。KAT.crのドメインが押収された後、残りのドメインは自主的にオフラインとなった[30]。
KATのオリジナルドメインが押収された後、複数の非公式ミラーサイトがオンライン化された。これらは元の運営チームとは無関係であり、同チームはユーザーに注意を促している[31][32]。これらのミラーのうちいくつかはその後閉鎖された[33]。
捜査は特別捜査官ジャレッド・ダー=イェギアン[34]によって主導され、ヴァウリンがiTunesでの取引に使用したIPアドレスと、KATのFacebookページにログインする際に使用したIPアドレスを照合することで逮捕に至った。また、FBIは広告主を装い、サイトに関連する銀行口座の情報を取得した[30]。
イリノイ州北部地区連邦地方裁判所に国土安全保障捜査局が提出した刑事告発状には、当局がKATのハードディスク全体、メールサーバを含むデータを保有していると記されていた。捜査官らは、KATが年間1,200万ドル以上の広告収入を得ていたと推定している[35]。
2016年8月下旬、アメリカ合衆国司法省は告発に続いて、ヴァウリンと他の2名、イェヴゲン・クツェンコおよびオレクサンドル・ラドスティンに対して正式な大陪審による起訴を行った。この時点でもヴァウリンはポーランドの刑務所に拘束されていた[36]。ヴァウリンはポーランドおよびアメリカの法的代理人を獲得しており、後者はen:Ira P. Rothkenが務めていた[37][38]。
2016年11月、ポーランドの控訴裁判所は、アメリカ側が提出した証拠が拘束の継続に十分であるとして、ヴァウリンの保釈を認めなかった[39]。
2016年12月���アルテム・ヴァウリンは重度の背中の問題により刑務所から病院へ移送された。当初、裁判所は彼の症状が入院を要するほどではないと判断したが、後に刑務所長が適切な医療を受けさせるために移送を許可した。医師は彼に部分的な麻痺および下肢の感覚喪失を診断し、手術が必要であると結論づけた。この健康状態により、いくつかの係争中の身柄引き渡し審理が延期された[40]。
2017年2月、一審のワルシャワ地方裁判所は、アルテム・ヴァウリンのアメリカ合衆国への引き渡しを承認した。この決定は身柄引き渡し手続の第一段階であり、最終的な決定は司法大臣によって下される前に、二つの司法審級による審査を含んでいた。その間、ヴァウリンは依然として重度の背中の問題に対する医療処置を受けるため入院していた[41]。
2017年5月18日、ヴァウリンは人道的理由によりにより保釈され、その保釈金は108,000ドルに設定された。保釈の条件として国外への出国は禁止され、旅券は押収された。釈放後、ヴァウリンは妻および5歳の息子と共にワルシャワの賃貸アパートへ移り、引き続き進行中の身柄引き渡し手続における二審裁判所の決定を待つこととなった[42][43]。
2020年後半、アルテム・ヴァウリンは予期せずポーランドを離れ、保釈条件に違反したことで行方不明となった。その結果、2020年8月26日にワルシャワ地方裁判所は彼の保釈金を没収し、ポーランドにおける身柄引き渡し手続は終了した[44]。ヴァウリンとの連絡が途絶えたことを受け、アメリカ合衆国における彼の弁護団は訴訟から撤退し、イリノイ州北部地区連邦地方裁判所は被告人の身柄が確保されるまで訴訟を一時停止することを決定した[45]。
復活
[編集]2016年12月中旬、一部の旧KATスタッフおよびモデレーターが、オリジナルと類似した外観のウェブサイトをドメインkatcr.coで立ち上げた[3]。このサイトは2020年7月以降オフラインとなっている。
脚注
[編集]- ^ “Alexa Top 500 Global Sites”. 2014年11月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月14日閲覧。
- ^ Nick Statt (2016年7月20日). “KickassTorrents domains seized after alleged owner is arrested in Poland”. 2016年7月21日閲覧。
- ^ a b “KickassTorrents Brought Back to Life by Original Staffers (Updated) - TorrentFreak” (2016年12月16日). 2025年5月5日閲覧。
- ^ Ernesto (2011年4月22日). “KickassTorrents Moves to Kat.ph”. TorrentFreak. 2014年3月15日閲覧。
- ^ Ernesto (2015年4月23日). “KickassTorrents Moves to Isle of Man Domain Name”. TorrentFreak. 2015年4月23日閲覧。
- ^ “KickassTorrents enters the dark webs, adds official Tor address”. Torrentfreak (2016年6月7日). 2016年7月21日閲覧。
- ^ “KAT DMCA”. 2015年2月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
- ^ O'Carroll, Lisa (2013年2月28日). “Online piracy: ISPs ordered to block access to three file-sharing websites”. The Guardian (London) 2013年3月1日閲覧。
- ^ EMI Records Limited, Infectious Limited, Liberation Music Pty Limited, Polydor Limited, Simco Limited, Sony Music Entertainment UK Limited, Universal Music Operations Limited, Virgin Records Limited, Warner Music UK Limited, Weainternational Inc v British Sky Broadcasting Limited, British Telecommunications Plc, Everything Everywhere Limited, TalktalkTelecom Group Plc, Telefónica UK Limited, Virgin Media Limited [2013] EWHC 379 (Ch) (2013-02-28), High Court (England and Wales)
- ^ “Moving to Kickass.To — Blog — KickassTorrents”. Kickass.to. 2014年3月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月15日閲覧。
- ^ Ernesto (2013年6月23日). “MPAA Kicks KickassTorrents Off Google With 'Precision' Takedown”. TorrentFreak. 2013年6月24日閲覧。
- ^ “Belgische providers blokkeren meer torrentsites” (オランダ語). 2025年5月5日閲覧。
- ^ “Irish Internet Providers Roll Out KickassTorrents Blockade”. TorrentFreak (2014年1月19日). 2014年1月19日閲覧。
- ^ “Twitter Blocks Kickass.to Links, Says They're Unsafe”. TorrentFreak (2014年2月21日). 2014年2月25日閲覧。
- ^ “Kickass.to has been officially blocked in Malaysia” (2014年6月25日). 2016年7月21日閲覧。
- ^ “KickassTorrent Moves Domain to Somalia”. Softpedia News (2015年11月18日). 2016年7月21日閲覧。
- ^ “KickassTorrents Moves to Kickass.so Domain Name”. TorrentFreak (2015年11月17日). 2016年7月21日閲覧。
- ^ Ernesto (2015年2月9日). “Kickass Torrents taken down by domain name seizure”. TorrentFreak. 2016年7月21日閲覧。
- ^ Ernesto (2015年2月14日). “Steam Censors Kickass.to Mentions in Chat Client”. TorrentFreak. 2015年2月25日閲覧。
- ^ “KickassTorrents Moves to Isle of Man Domain Name” (2015年4月23日). 2015年6月7日閲覧。
- ^ “KickassTorrents is moving to kat.cr domain”. kat.cr (2015年4月25日). 2015年6月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年6月7日閲覧。
- ^ Ernesto (2015年7月18日). “KickassTorrents Disappears From Google After Penalty”. TorrentFreak. 2015年7月20日閲覧。
- ^ Ernesto (2015年10月26日). “Portugal Blocks Popular Torrent and Streaming Sites”. TorrentFreak. 2016年7月21日閲覧。
- ^ “Google may soon ban torrent sites” (英語). India Today (2017年2月13日). 2025年5月5日閲覧。
- ^ Ernesto (2015年10月27日). “KickassTorrents Blocked Again Over 'Harmful Programs'”. 2016年7月21日閲覧。
- ^ “Chrome and Firefox Block KickassTorrents as "Phishing" Site”. TorrentFreak. (2016年4月12日) 2016年4月12日閲覧。
- ^ “KickassTorrents Domain for Sale at just $230”. 2016年8月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月9日閲覧。
- ^ “KickassTorrents Domain Goes Up For Sale For A Minimum Bid of $230”. Fossbytes (2016年8月8日). 2016年8月9日閲覧。
- ^ “Kickass Torrents targeted by DOJ, feds say website distributed $1 billion in copyrighted works”. The Washington Times (2016年7月20日). 2016年7月21日閲覧。
- ^ a b Van der Sar, Ernesto (2016年7月20日). “Feds Seize KickassTorrents Domains, Arrest Owner”. TorrentFreak. 2016年7月21日閲覧。 “At the time of writing the main domain name Kat.cr has trouble loading, but various proxies still appear to work. KAT's status page doesn't list any issues, but this will be updated shortly.”
- ^ “KickassTorrents Mirrors and Imposters Spring into Action”. Torrent Freak. 2016年8月2日閲覧。
- ^ “KickassTorrents Community Resurrects, Without Torrents”. Torrent Freak. 2016年8月2日閲覧。
- ^ “KickassTorrents mirrors go down, but new KAT sites quickly spring up”. Vebture Beat. VentureBeat (2016年7月31日). 2016年8月2日閲覧。
- ^ Ockenden, Will (2016年7月22日). “Kickass Torrents: How did the US Government bring down the file-sharing site?”. news.com.au. 2016年7月24日閲覧。
- ^ “Can KickassTorrents Make a Comeback?”. TorrentFreak (2016年7月21日). 2016年7月21日閲覧。
- ^ Van der Sar, Ernesto (2016年8月25日). “U.S. Government Indicts Three Alleged KickassTorrents Operators”. TorrentFreak. 2016年8月25日閲覧。
- ^ Van der Sar, Ernesto (2016年7月28日). “KickassTorrents' Alleged Owner Retains Kim Dotcom's Lawyer”. TorrentFreak. 2016年9月26日閲覧。
- ^ Cooke, Chris (2016年10月4日). “Extradition proceedings underway in Kickass case”. Complete Music Update. 2016年10月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月9日閲覧。
- ^ Alleged KickassTorrents Owner Stays in Prison, Court Rules 2 November 2016
- ^ “Alleged KickassTorrents Owner Leaves Prison for Hospital”. TorrentFreak (2016年12月10日). 2025年1月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
- ^ “Alleged KickassTorrents Owner Can be Extradited to The US, Court Rules”. TorrentFreak (2017年3月1日). 2024年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
- ^ “An interview with alleged KickassTorrents founder in his jail cell in Poland”. The Verge (2017年5月23日). 2024年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
- ^ “Alleged KickassTorrents Founder Released on Bail”. Torrent Freak (2017年5月23日). 2024年11月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
- ^ “US Case Against KickassTorrents in Trouble as Alleged Operator Flees Poland”. TorrentFreak (2020年10月8日). 2025年1月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
- ^ “Alleged KickassTorrents Operator is Now Officially a Fugitive”. TorrentFreak (2020年10月28日). 2025年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月30日閲覧。